レストランのチップって必要?どれくらい払う?
「実際、チップって気持ちしだいなんでしょ?払わなくてもいいよね?」
こんなふうにドイツに遊びに来る日本人のかたに聞かれることがあります。
チップ文化のない日本では少し身構えてしまう、何ともわかりづらい習慣ですよね。
言葉もうまく伝わらないし、チップなんかより無言で支払いを済ませたい!と考えている旅行者や短期滞在のかたの気持ちも理解できるのですが、やはりチップはマナーとして必要です。
ちなみに無言で会計をする場合、店員さんがお釣りから勝手にチップを取ることはありません。チップを払うには自分からの意思表示が必要です。
まれに店員さん側からチップを支払うよう催促されるケースもあるようですが・・・ これは例外です。
今回は、チップって何?という基本的な部分に加え、どれくらいのチップを渡すのが一般的なのかをご紹介したいと思います。
チップは、ドイツでは"Trinkgeld" トリンクゲルド、と呼ばれます。
バーに来たお客さんが、店員さんのお酒をおごるために小銭を渡したのが名前の由来だと言われています。
現在は、飲食費等の商品金額とは別で店員さんに払うお金をチップと言います。基本的にレストランなどのチップは受け取った本人の私物にはなりません。接客する人以外にも厨房や掃除をする人などたくさんの人がいますから、従業員全員で分配するというのが一般的なチップの取り扱い方法のようです。
チップがなぜ必要かという点については、日本に比べ欧州ではレストランやカフェで働く人たちの「本職」としての地位が確立されていることが大きな理由として挙げられます。
日本ではカフェで働くと聞くと「バイトかな?」となんとなく想像してしまいます。ですが、ドイツではカフェでの仕事を本業として生活をしている人もたくさんいます。そして、その生活を支えるのが毎月の給与以外にプラスアルファで支払われるチップなのです。
チップがなくなると従業員の生活が不安定になり、カフェでの労働希望者が減るかもしれません。お店が経営できなくなって店舗数が減れば、それだけ失業者も増えます。国による保障が必要になり、国の経済までも変化してしまうかもしれない・・・
少し大きな話になりましたが、そういった考えもあり欧州ではチップを支払うのが常識と考えられています。
ただしチップは従業員の労働に対するものなので、カウンターで商品を受け取るだけなら店員さんにチップを支払う人はほとんど見かけません。あくまでも、オーダーを取ったり席まで商品を運んでくれる店員さんに渡すというのが基本です。
ここでちょっとした例題を。
カフェで買った商品をテイクアウトで持ち帰る場合は? チップ不要。
ファーストフード店では? 店員さんがテーブル席までサービスしにくることはありませんので、やはり不要。
チェーン店のカフェは? これもカウンター受け取りなので払わなくて大丈夫。
それでは、宅配ピザは? 届けてくれてありがとう! これは払ったほうがよさそうですね。
どんなシーンでチップを払うべきか、なんとなく想像できますでしょうか?
チップとは少し異なりますが、例えばファーストフードでもお釣りが細かい場合などに「お釣り不要です」と伝える人もよくいます。ドイツ語では "Stimmt so" シュティムト ゾー と伝えます。ニュアンスとしては全額どうぞといった感じでしょうか。
さて、カフェにやって来ました。
商品の額とチップの額について例を挙げながら見てみましょう。

こちらのカフェではカフェオレ1杯4.7ユーロ。 お会計のときは5ユーロ払う人が多いのではないでしょうか。
もしくは2ユーロコイン3枚で、6ユーロ払う人もいるかもしれません。
商品額とチップの金額の割合は、ざっくりとしたイメージですが以下のような感じです。
・5ユーロ以下のときはセント分の端数を切り上げる。もしくはプラス1ユーロ払う
・5~10ユーロのときはセント分の端数を切り上げ、プラス1~2ユーロ払う
・10~20ユーロのときはセント分を切り上げプラス2~3ユーロ払う
だいたい、商品価格の10~20%がチップとして妥当と考えられています。
今回は2人でカフェに来ました。2人ともカフェオレを飲み、ケーキ1個をシェアします。
カフェオレ4.7ユーロで、ケーキが5ユーロとします。合計14.4ユーロ。
この場合は16ユーロ払い、友達どうしなら折半すればOK。
店員さんに20ユーロ札を渡し、笑顔で"16euro bitte" 「ゼヒツェーンオイロ ビテ」と伝えます。
にっこりした表情で"Vielen Dank"とお礼の言葉が返ってくるはずです。
続いて某ラーメン屋さんに来ました。
おいしくて調子に乗って飲んで食べていたらこんなお会計に。1人20ユーロくらいで済むと思ったんだけど・・・
2人合計でいくら払いましょうか?

チップ込で70ユーロ、もちろん大丈夫です。 ですが今回は75ユーロを払いました。
ちょっと高くついちゃった。頻繁には来れないけれど、おいしかったからまた再来月あたりに来ますね、なんて店員さんと話しながら店を出ます。
なかなかの出費ですが、飲食の費用が上がればそれだけ渡すチップの量も多くなってきます。同席していたのは普段倹約家なドイツ人なのですが、チップに関しては毎回きっちり払っています。
高級店になるほどサービスに対するチップの額は顕著に上がります。某有名ステーキ店で400ユーロ強の会計となったときには500ユーロの支払いをしていました。
高級店に限らず、よく行く店や今後も良い関係を保ちたい店では少し多めにチップを渡すケースが多いようです。次回来るときにも楽しい時間、おいしい料理を提供してもらいたいという気持ちがその背景にあります。
ちなみにチップ込の金額でカードをきることもできますが、商品支払いのみカードでし、チップは現金で渡すケースをよく見かけます。これも現金で渡したほうがチップとしてカウントしやすいんじゃないかなと店員さんを思う気持ちからなんでしょうね。
いかがでしたでしょうか?
チップそのものは仕組みを理解すれば複雑なものではありません。ですがチップの由来が他人を思う気持ちから来ているものなので、チップを支払うためにはコミュニケーションは欠かせません。
せっかく現地のレストランに行くのでしたら、間違えてもいいのでぜひ積極的に話しかけてみましょう。そうすることでその土地や人に対する愛着がわいたり、新しい発見ができるかもしれません。